スイートハプニング【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】
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スイートハプニング【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】

kanipan

恋についての主観と客観

ネタバレ
2025年6月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 新刊作者買い。なんだか論文みたいなレビュータイトルになってしまいましたが…

好青年で成績優秀、生徒手帳を熟読するくらい真面目で人気者な柊木恭也(ひいらぎきょうや)の最大関心ごとは、高校の入学説明会で困っているところを救われて以来恋心を抱いている、クラスメイトの春日光希(かすがみつき)。ところが、助けてくれたはずの光希はそのことをすっかり忘れているようで……
なかなか距離を縮められないピュアな2人がハプニングをきっかけにゆっくりと心を通わせていくハートウォーミングな初恋物語で、気になるイチャイチャはキス止まり。あの、ヤンデレ執着インモラルを得意とするカニパン先生の面影はほとんどありません。

この作品の素晴らしいところは、恋愛だけにとどまらず自己成長や人間関係を丁寧に内容に絡めているところ。
大人への移行期間である思春期はなにかと人の目を気にしがちだし、行動範囲や交友関係もただでさえ固定化されやすいものなのに、恋なんかしてしまった日には…IQも3くらいに低下するじゃないですか…そのため自分の中にある材料だけで相手の気持ちを断定したり、どう思われているか気にするあまり暴走するのが常ですが…恭也と光希は、自分たちの置かれた状況や感情を客観視できるからそれほど拗れずに済んだのかもしれない。
そうはいっても客観だけでは他人事になりすぎて友達ですらいられなくなるし、主観だけだと近すぎてただの嫉妬魔になるしで、シーソーみたいにギッタンバッコンと未知の感情に振り乱される恭也と光希。いっそかっこつけず、正直に自分の気持ちを口にしてみたら…
その先に、お互いの想像していたような酷い結果なんて待っていなかったことを知るのです。

自分の態度で相手の出方が変わったり、その出方に対する反応からまた新たな自分を知ることになったり、自分たちのペースで恋を自覚していくかわいい2人の物語をのぞき見ることができ、デバガメ読者は幸せです。
もちろんこのきれいなまま、健全なまま終わることに文句はないのですが…もう三歩ほど進んだ先を見てみたい気もします。
嘘です。ほんとはすっごく見たいです。
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