にいちゃん
」のレビュー

にいちゃん

はらだ

なるほど、大問題作です

ネタバレ
2025年7月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 幼い頃、近所のにいちゃんに手を出された男の子が、成長してからもそのにいちゃんのことが忘れられず、街を徘徊してようやく再会出来たものの、昔とは違った関係性になってしまったお話。
多くの人から、「にいちゃんはメンタルが大丈夫な時でないと読めない」と聞いていたこの作品。確かに、これは読後感がものすごく悪くなる前代未聞のお話だと思います。
BLはファンタジーとは言えども、この作品が切り抜いているのは同性同士の愛でも、年の差の恋愛でもなく、はっきり言って犯罪です。おじさんがにいちゃんにした犯罪が、にいちゃんやにいちゃんの家族だけでなく、まいこやゆいすらも巻き込んで苦しめる結果になってしまっているのに、当の本人は何事もなかったかのように、また新しい家庭を築き、子供を作っていることが何よりも許せなかったです。これはBLではないし、ショタ好きという性癖であり、犯罪です。
にいちゃんがさらに不幸だったのは親が毒親だったということ。田舎のいいとこの坊っちゃんだったが故に、世間体という常識をぶつけられ、人格形成が破壊されるほどの躾を受けて育つ。そんな過程が、愛着を愛憎として歪ませていったことは一目瞭然。ゆいの親は一般的な親だと思いますが、事件を全てにいちゃんのせいにしてしまったのが良くない。ゆいは鍵っ子で淋しかったんじゃないでしょうか。にいちゃんもゆいも、ただ好きでいることを否定され、なぜそれがダメなのかが分からなかったからこそ、愛情をこじらせてしまったような気がしました。
とは言え、淋しい子供心につけ込み、楽しく過ごすことで安心感を与え、愛情の行為として性的搾取をするそのやり方は、善悪の判断が乏しい子供に対しては犯罪なのです。ゆいの目線で物語が進むので、恋愛的感覚に囚われてしまいますが、これは愛ある関係性ではないのです。最終的ににいちゃんとゆいはくっつきますが、薬に頼り、親にも言えない後ろめたさを感じている二人の未来は破滅的だと感じました。
ありとあらゆる意味で、この作品を描いたのはチャレンジでしょう。作品の完成度は高くても、倫理的観点から高評価にはしづらいです。逆に、これは犯罪で、こうやって繰り返されるという啓発漫画だと思います。何度も言いますが、これはBLではなく、犯罪です。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!