僕らを隔てる青と白
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僕らを隔てる青と白

きゆひこ

灯台と空白の7年

ネタバレ
2025年8月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校時代交際した同級生の再会ストーリー。星☆3.7
高校3年の春に三島と石崎帆澄は人知れず交際を始めた。三島は灯台守をする祖父の後を継ぐため自由を制限されていた。そんな姿に石崎は興味をもつ。石崎は漁師をする父と、自営を営む母、そして都会へ出た兄をもつ家庭で育った。ごく普通の高校生だ。二人の交際は制限つきの中でも楽しかったのだろう。しかし進学を期に石崎は三島を振って島を出る。そして7年後、島に戻ってくる

作中に空白の7年間の描写はない。石崎は三島に会って再び恋しくなる。別れ話が自分を守るためのものか。それとも相手を大事にしたいが故の別れなのかを理解できる十代はどのくらいいるのだろうか。島に残った三島、外の世界を体験した石崎。数か月の楽しい思い出と失恋。傷ついた心を持て余す時間。壊れた関係を修復することはできるのか。

この物語の軸は石崎が想いを伝え、三島が再び受け入れるかが鍵になっている。なかでも心ひかれているのが潮騒と灯台が織りなす風景だ。灯台の向こうには別の島が浮かび、朝日と夕日が二人の背景にはいる。ストーリーは登場人物の生きざまがメインだが、灯台が見える高校や海沿いの道はなにげに郷愁がある。自分にも同じ人生の思い出がある。よく水平線に沈む夕日を見にいった。日の入りは数分間のドラマだ。泣くときもあるし、心湧きたつこともある。そのときの感情を思い出と共に記憶する。1度は別れてしまった石崎と三島。長い人生に必要な7年であり、大事な潮目になったと信じたい。

評価がそれほど高くないのだが、島と灯台、海と空の舞台に自分を投影するのも悪くないと見直した作品。
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