君は夏一番【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
狼森圓
このレビューはネタバレを含みます▼
社畜リーマン・東堂聖永(せな)と農家の森田群士(ぐんじ)の農業BL。193頁 星☆3.9
読み終わった後の癒され度は満点。ハードモードの読み物の合い間に読みたい作品。
東京で擦り切れるまで働いた聖永は退職して、あてもなく電車に乗り込む。降り立った駅で郡士と出会う。農家を営んでいる森田家に迎えられて夏野菜の収穫体験を経て、本格的な移住へと気持ちが強くなっていく。
冒頭、聖永が降り立った駅では360度の空と緑が広がる。セナは涙を堪えてたたずんでいた。それは苦しい社畜時代のトンネルを抜けた安堵だけだろうか。どこか喜びにも見える表情が胸にせまる。そこへまるで友達を迎えに来たかのように声をかける群士。群士は弱っている者をほっておけない優しい心根の青年。連れて帰った聖永が誠実でまっすぐに慕ってくれる心地よさに離れがたい感情が芽生える。
ここでは、よそ者だとか、同性の葛藤とか、当て馬だとかの煩わしい要素はなくていい。聖永の真面目で優しい性格と群士の大事な人たちの力になろうとする生き方があればいい。さしずめご飯と味噌汁にお漬物でお腹は満たされて、ちょっと甘い果物があれば最高の1日。そんな素敵なストーリー。
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