妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~
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妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~

橘ちなつ

リアル

ネタバレ
2025年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私の知人の奥様も出産後に急に様子が変わり、包丁を持ち出す様な事態にもなってしまい、奥様の親御さんに乞われて離婚した方がいました。その事がずっと忘れられなかったので読んでみました。単行本、単話ともに低評価レビューも見た上で読みましたが、言われるほど主人公の言動に不快感を感じず、甘えたでひどいとも思いませんでした。しかも、最後まで読むと、精神科の主治医にも太鼓判をもらった上での妊活という事が分かります。主人公の陥った状態に対しても、きちんとした原因があった事が判明します。作者様の体験談という事もあって誤解が解けたらいいなと思いました。更に、精神科病棟に入院している時の描写も、酷評する程とは思えませんでした。色々な考えや接遇スキルの医療職の方がいるのは事実ですし(同じ医療職として信じられないと思う様な事も日々あり。)、過酷な現場に勤めていると余裕が無くなって気持ちに寄り添えなくなったり、或いはこれが当たり前の日常になってしまってしまったりという事もままあります。(そうならない様に皆さん努めていますが。)ずーっと呼び掛けられている事に対して、その都度対応ができないのも事実です。だって仕事が回らないんです。それに対して患者様がどう思うかは、判断力が低下していたり、感情が抑えられなかったりしている状態の時と、通常の時とでは乖離があるのは当然だと思います。又、しっかりされている方でも、職員の雰囲気や一言で気の持ち様は変わります。身体拘束に関しても、やむを得ない場合に行い、慎重な対応が求められる行為です。自分の状態が分からない、受容ができていない時だと、必死になるのは当たり前だと思います。(蹴って破壊とかあります。)勿論、一生懸命してくれている職員に対してヒドイと思う気持ちも分かります。でも、これは当事者の目線で描かれていますので、特段非難する事ではないと思います。職員の対応が例え適切であったとしても、それに対してどう感じるかはやはり本人様次第。その方にとって、その見え方、感じ方がある意味その時の真実と言えると思います。認知の歪みがあったとしても、病気によって引き起こされた事を誰が責められるのでしょうか。気持ちの変遷や治療経過もリアルで、私は良作だと思いました。最後は、子どもさんとも過ごせる様になって、良かったと思います。今も未来も、家族みんなで健やかに過ごされていてほしいです。
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