きみに願えば
」のレビュー

きみに願えば

カラスマトリ

雲の夜空にとどいた願い

ネタバレ
2025年8月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 失恋大学生と訳あり社会人大学生の恋愛BL。206頁。星☆3.8

流星群が輝く日に、大学生の天野 蒼(あおい)は好きな先輩から「君とは付き合えない」と告げられる。傷心と失恋で酔っぱらった蒼が夜空へスマホを掲げ、3つもの願いを高速再生させた行動が、加賀美 恒(わたる)との出会いとなる。長身、長髪、髭をたくわえ、腹をよじって笑い飛ばしているその人は蒼に語りかける。「これもご縁だし、願いをかなえる手伝いをしようか」はたして蒼は失恋から立ち直れるのか。

この二人の掛け合いは動と静。若く元気な蒼は関西人。友人のシンジとつるんでいる。方言と関西のノリは悪目立ちするため封印中。明るくておしゃべりが好きでそれでいて相手の心に寄り添える良さは曇り気味。しかも恋愛初心者で甘いムードにビビッてしまう。加賀美は美術学科の大学生。学内には従弟や女友達もいて謎めいている。恋愛ヘタレの素顔をムードとタッチで包んでしまう上級者。次第に蒼は関西弁を解放をしていく。

今回なんといっても加賀美の色気に驚いた。微笑んでも、戸惑っても、少し不機嫌でも独特の雰囲気が漂っている。例えるなら雲が流れる静かな月夜。その彼が蒼を前にすると、ちょっかいを出したり先輩の電話で嫉妬したりと変化するのは見どころ。それに加賀美は社会人の気まぐれで大学へ来た訳ではなかった。その理由が美術学科の課題と同時並行で明らかになっていく。

作画はこれから磨きがかかっていく原石状態。蒼の願いを加賀美恒の恒星がかなえてくれる素敵な作品。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!