このレビューはネタバレを含みます▼
イケないリーマンと奔放な美容師の再生BL 196頁 星☆4.0
三十路半ばの雪平冬司(とうじ)は結婚してもセ/クスが上手くできない。そのうちAVでないと発散できなくなり、夫婦関係が冷えていく。ある日、実姉が経営している美容室に立ち寄ると、そこには見習いの南月練(れん)がいた。
序盤から冬司の重症具合にクラクラした。駐車場でAV鑑賞するわ、初対面の練に奉仕されて、誘惑と快楽の耐性がないのも驚きだった。冬司に限ったことではないが、周囲の意向を重視して自己決断を放棄したツケはかなり大きい。こいつは一度大きくすると手がつけられない。冬司のツケは妻の不倫まで拡大していく。
妻は不倫公認の結婚生活を提示してくる。なかなかの修羅場だが、現状把握ができている賢い女だ。社会は女性の不倫に非常に厳しい。冬司視点だとエリートサラリーマンが妻に裏切られる構造にみえるが、苦悩にひたるナルシズムが見え隠れしていて、どうにも気持ちがよくない。妻が家を出て行って、直ぐ連絡もしないし、探したりもしない。その上、妻のいない家に練を入れている。言葉と行動が裏腹で、なんともスッキリしない。作者がこのヌラヌラべたべたする読後感を狙っていたなら、見事にはまってしまった。
南月練は貞操観念以外にいろいろゆるくてトラブルが付いて回る問題児。それでも冬司がタイプなので一生懸命に愛情を向けている。愛を欲しがる子供のようにも見えて、哀しみと可愛さがある。
人生のツケは借金のように一括返済ができない。ツケの払い先は冬司自身だ。ちょっとずつ、自分を満たすだけで晴れやかな笑顔になれる。
作者さまは、泥へ足を取られたり、汚れたりする人物が上手い。そこがいいと思っている。