九尾狐の花嫁
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九尾狐の花嫁

占地

生贄までの5日間

ネタバレ
2025年9月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 九尾狐と名士の青年絶倫BL 206頁 星☆4.0

名家の嫡子だった羅仙(らせん)は、伝説の嫁として捨てられる。羅仙の先祖は生贄を捧げて街を繁栄させていた。九尾狐は50年目のご馳走をお腹を空かして待っていた。

長髪の美丈夫、九尾狐の登場の美しいこと。作者さまの画力は確か。空飛ぶ馬車も優雅に中華の世界観が丁寧に描きこまれている。
羅仙は死を前にして逞しかった。なんと生贄の猶予を5日間もらえることになる。本来の賢さから九尾狐を丸め込み、一緒に都見物に出かけたり、名所めぐりをしたり。そうして心から可笑しくて笑った時、捨てられた孤独と思い出が涙に変わる。

九尾狐は四千歳の長寿。仲間は登場しない。長い時間を過ごす慰みはなんだろう。50年おきに訪れる人間は九尾狐に興味をもって会話をしただろうか。名前を尋ねた者はいなかったのか。彼が羅仙から呼び名をつけられた時の「嫌いではない」は眩しかった。名はありふれていて見過しがち。存在が個になる瞬間。九尾狐の表情も美しさ以上の魅力が増していく。

表紙帯の絶倫は、九尾狐が空腹から閨事(ねやごと)をしつこく始めてしまう。そこは、紛れもない絶倫ぶり。なのだが初対面時に羅仙は妖術で性に目覚める。そもそも生贄なら妖術は不要だ。九尾狐が求めていたのは空腹の渇きだけではなかったのかもしれない。

実力のある作者さま、他の作品もレヴューしてみたい。
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