このレビューはネタバレを含みます▼
センチネルバースの内面 213頁 星☆3.9 舞台は日本の政府特務機関。超感覚を持つ者と導く者の絆と活躍を描く物語
全人口の数%の『センチネル』は五感が超人的に発達した能力者。覚醒するとスピリットアニマルが魂の姿で現れる。天川憲史(けんし)は五感全てが覚醒した希少な最高ランク。鷹の眼差しで獲物を逃さない。その能力制御やメンタルケアをできるのが『ガイド』だ。センチネルもガイドも高い能力の代償は精神錯乱やゾーンアウトの命の危険と隣り合わせ。天川はどんなに疲弊しても回復のガイディングを拒んでいた。そこへ同級生の黒井がアメリカから戻ってくる。黒井は蛇のアニマルをもつガイドだった。
この作品はセンチネルバースの精神も丁寧に展開してくれている。10代で覚醒した天川が未熟さから黒井の魂のシールドを壊してしまう。精神の最後の砦を破壊されると再構築に時間がかかる。黒井は半年を要した。目覚めた黒井に待っていたのはガイドを拒否する天川。一度の失敗で能力差の烙印が黒井には残る。その辛さや口惜しさで深く傷ついたはずだ。それでも天川をガイドしたい黒井の本気度が枯れることはなかった。アメリカ行きは対等の力を得て、隣に立つ覚悟がみえる。そこに長い未来を見据えた、男の愛を感じる。諦めるのも愛なら死が目前でも離さない愛もある。蛇は知恵の象徴をもつ。賢く静かに天川へ巻き付いていく。脱皮して大きく成長した蛇は鷹とも対等になれるだろう。
最後に印をみて「カドゥケウス」を連想した。ギリシャ神話の医神がもつ杖なのだが翼と蛇が描かれている。魂の融合率の高さは歴史からも読み取れそうだ。ここはセンチネルバースの美しさ。共依存よりは互いの運命を背負う誓いのシンボルが刻まれていく。