このレビューはネタバレを含みます▼
センチネルバースの入門書 198頁 星☆3.9 はぐれたセンチネルとガイドの逃避行。
物語は幼馴染の二人が再会し、覚醒した能力と向き合いながら生きる道を模索していく展開になっている。
人口の数%の『センチネル』は五感もしくは一部が通常より発達した能力者。その情報量が膨大なため、制御したり回復のケアが必要になる。それを担えるのが『ガイド』で、やはり数が少ない。共感能力と読心でセンチネルの生命線だ。
新しいと思っていたセンチネルの世界。発展途上なのかそれとも既に成長が進んでいるのか。作者さまによる設定があって面白い。
槇賜郎(しろう)ことシロはセンチネルでありながら能力に苦しんでいる。家出からヤバめの金稼ぎで生きる日々。心の安寧がない未来に疲れていたのかもしれない。そんなときに幼馴染の康代(こうだい)が現れた。普通の高校生をしている真っ直ぐな康代。しかも目の前でガイドに覚醒したことで、肉体の苦しみをケアしてくれるという。シロの虚無の心に灯がともり始める。
康代がめちゃいい奴で、大事な人を真剣に守りにくる。シロのケアをする度に流れ込んでくる「一緒にいたい」気持ち。センチネルが依存するのは肉体の苦痛だけじゃないのも伝わる。ガイドの力量は強靭な精神力がないと始まらない。そういえば、康代は覚醒した不安もシロの仲間にもひるんでいなかった。ガイドというよりナイトみたいだ。特別な能力を搾取するのは裏か表か。どちらにしても強い絆がふたりの希望となるのは間違いない。
逃避行で追い込まれた二人。康代がシロを守るための誓いがラストでなんとも憎い。センチネルバースを分かりやすい表現で見せてくれる入門の1冊。