アダムの肋骨
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アダムの肋骨

みちのくアタミ

運命の分身と出会い救済される感動作!

ネタバレ
2025年9月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 多重人格という難しい題材を、巧みにBLへと落とし込んだ感動作。

6つの人格を持った相手との恋愛の難しさ、忘れていた過去の記憶、解離性同一性障害の原因と治療、人格の統合、濃密なラブシーンと、盛り沢山な内容が2巻の中にギュっと凝縮されています。

6つの人格を持つ人物の描き分けはとても難しいと思うのですが、同じ顔でありながら表情や雰囲気がガラッと変わり別人に見えるところが、さすが先生の画力!

そして、難しいテーマながら、ラブシーンもしっかりページ数をさいて描かれているので、BLとしての満足度も高いです。

別人格同士で主人公を取り合ったり、別人格と◯◯した主人公を浮気者扱いしたりと、多重人格でしか描けない設定が新鮮味あります。

多重人格だと分かっても態度を変えることなく、全ての人格に優しく接する悠真が、一羽やレイ始め各人格の心を癒やしていくのですが、最後に主人格に悠真を譲って消えることを決断する◯◯が切ないです。

とはいえ、人格が統合された後も、主人格の中に時折り消えた人格の面影が垣間見えることがあり、それを感じた悠真がホッとするところも泣けます。

多重人格でなくとも人の心の中には様々な面があって、環境や場面によって自分の嫌な面が表に出てしまうことがありますよね。

そういう面を自分自身では否定しがちなのですが、悠真のように、そういうところも受け止めて愛してくれる人が身近にいれば、それが生きていくための大きな拠り所になるんじゃないかと、本作品を読んでしみじみ感じました。

ちなみに、タイトル「アダムの肋骨」は、『創世記』にある、神がアダムの妻であるイブをアダムの肋骨から作った逸話から…と思われます。

神は、アダムが孤独にならないようイブを作りました。

アダムとイブは違う人格でありながら元は1つであり、互いに助け合い依存しあって共に生きていく存在です。

一羽とレイも異なる人格として、あまりにも辛い子ども時代を互いに助け合って生きてきました。

人格が統合され表からは消え去っても、心の中で二人(もちろん他の人格も)は共存し、さらに悠真という「運命の分身」を得たことで、これからはきっと幸せな人生を送ってくれるのだと思います。

たくさんの方にぜひ、この爽快な読後感を味わっていただきたいです。
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