落とし子と従者の物語
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落とし子と従者の物語

水花-suika-

復讐と権力、そして後日談

ネタバレ
2025年10月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 鉄仮面従者と美人貴族の格差愛 1巻193頁 2巻185頁 耽美な感じが気になり購入 星☆3.8

ユリウス・カイヴァントは領主の庶子。細い体の金髪碧眼がお人形のように整っている。奴隷として処刑寸前だった大男は「クスター」と名付けられ買い取られる
さて、1巻はユリウスと叔父、父親と継母、そして兄・ルーカスのドロドロとした権力争いが舞台となっている。叔父はユリウスの母に恋をしていた。生き写しのユリウスを身代わりにしたうえで、金持ちの相手もさせている。幼年期のトラウマはユリウスの心を硬く鋭い刃物のようにしていく。醜い大男クスターは両親に奴隷として売られ、商品のように雇い主を転々としながら生きてきた

ユリウスは兄・ルーカスに恋慕している。ルーカスも愛らしい弟を大切に。大人の事情が挟まなければ別の恋愛物語が誕生していたかもしれない。クスターは雇い主に人生を搾取されながら健気にしかも無垢な愛をもっていた。恋というよりは愛に限りなく近い安らぎ。この愛はこんこんと湧き出る泉のように溢れ出て、ユリウスの心を穏やかにしていく

権力争いは1巻で終焉。きれいにまとまっている。コース料理に例えるとメインディッシュで満腹な状態。2巻はデザートで飲み物の苦みと酸味のある果物が甘いモノと一緒になっている。こちらの方が恋のきらめきがある

終いは、お気に入りのシーン。ユリウスは客の相手をした夜、クスターを部屋に呼びキスをする。仮面をはずし口づける様が真っ白な恋の芽吹きのようで印象深かった。

体格差と美醜の美しさが織りなす古典的な作品
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