親愛なるジーンへ
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親愛なるジーンへ

吾妻香夜

絶対『ラムスプリンガ』の後に読んでほしい

ネタバレ
2025年10月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『ラムスプリンガの情景』の前日譚でもあり、スピンオフでもあり、続編でもある作品。

『ラムスプリンガ』の回想シーンのみで登場したジーンの人生、そしてジーン&トレヴァーとの運命的な絆が描かれています。

『ラムスプリンガ』のテムは、大切なものを捨ててでもオズとの愛に生きる選択をし、その決断に至るほどの2人の愛情の深さはとても感動的でした。

本作品では、『ラムスプリンガ』とは真逆の「愛の形」が描かれています。

『ラムスプリンガ』で「愛とは素晴らしい呪い」だとクロエは呟きましたが、ジーンとトレヴァーは「相手を縛る愛」ではなく「相手を自由にする愛」を選び、シリーズ作品でありながら2つの対照的な愛を描き出すことで「愛にも様々な形があるんだよ」という吾妻先生のメッセージを感じます。

2巻は通常版と特装版がありますが、特装版の「完結記念小冊子」は必読ものなので、全力で特装版をオススメします。

最後に付け加えると、この物語の時代にはNYでさえ大っぴらに同性愛者への偏見があったこと、また離婚の際の親権制度の変化、モンゴメリー・バス・ボイコット、ストーンウォールの反乱など、世相や時代背景が丁寧に描かれている点においても非常に興味深かったです。
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