このレビューはネタバレを含みます▼
蛇口が緩んで締まらなくなったみたいに、次から次に大粒の涙が出てきて止まる気配がないってくらい、泣き通しでした
序盤はクール×おバカの明るい話かなーと思っていたのですが、根底にあるものは大きな喪失の物語で、そう気づいた瞬間から涙が本当にずっとたれ流し…
落ち着いたらレビューを書こう、と思いましたが、いくら待っても落ち着きそうにないので、このまとまらない気持ちを残しておこうと思います
この世界には『死んだ人とはもう話ができない』という、覆らない決まりがあるから、失ったあとに残された人はもういつまでも自問自答を続けるしかない
そしてその自問自答の中でおそらく最大の悲しみは【自分の存在が相手の生きるフックになれなかった】ということだと思います
残された人はこれが辛いんだと思うんだよね。自分では相手をこの世に引き留める理由にならなかったんだな、という悲しみ。これが辛い。
私もきっと大事な人を失ったときには「私がいたのになんで?」というような気持ちになると思う
悲しくて苦しくて、一生の傷になると思う
でも本作を読んで、はらはら流れ続ける涙を拭いながら読んで、
『多分命を落とすその瞬間、つらい出来事と私とを天秤にかけてジャッジするようなことはしてないんだ』
と知りました
辛い出来事は深い傷としてずっと食い込み続けていて、いつかその人には体の寿命よりも先に心の寿命が来る
私にできることは、その瞬間が来るまでのその人の残りの時間をせめて明るく、優しく、温かくすることだけなんだな、といまはそう思います
アキは、省吾に出会っても辛い過去を消すことはなかった
でも、省吾といたことで、アキは死ぬその時まで幸せだったと思うんです
あのメッセージを残したということは、絶対に幸せだったんだよ
そう思う
愛する人を失うしかなかったことは悲しくて苦しくて一生癒えない傷だけど、
愛する人を失う瞬間まで幸せにできたこともまた事実なんだと思います
アキと省吾はメインカップルではないのに、この2人の話だけですみません
だけどもう少しの間、これだけを考えていようと思います