ようきなやつら
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ようきなやつら

岡田索雲

重いテーマを描くと手に余っている印象

ネタバレ
2025年10月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 232ページ。
最後に入っている表題作が、アベンジャーズの趣があって楽しかったです。実際に描かれたのは最後でも、話ができたのはこれが最初だったそうです。こういう路線で全部行ってほしかったな〜。
同著者他作品を読んだことがあって面白かったのでこちらも読んでみましたが、問題提起感が強すぎて趣味に合わなかったです。妖怪を妖怪としてでなく、人間の戯画として都合良く使っている。人の現実と妖怪を重ねる、そういう手法もアリとは思っていますが、今作は著者の主張が強すぎかつ思考の深さこなれ方が足りない印象。手に余るテーマを妖怪を利用して表に出したという感じです。そこにエロ系ネタがちょこちょこ入るのが個人的に不快で、厳しめの星2。
以下、各話覚書。
〜〜〜〜〜
・『東京鎌鼬』
これ、女の方がひどいよねぇ……女の不安はわかるけど、この男を選んだのは女なのにひどい裏切りだと思う。
・『忍耐サトリくん』
これが一番良かったです。心の中で何を考えていようとも、この教師、教師として振る舞おうという意識があるし実際にサトリくんに声をかけたりと、よくやっていると思う。ただ、心の中で考えている内容に性的なことを持ってきたのは趣味じゃない。
・『川血』
河童の夫婦がこの子を迎えた経緯の方にドラマがありそうだけど、そっちは描かれてなくてかなしい。
・『猫欠』
メッセージ性が強い。猫であることにも妖怪であることにも必要性を感じなかった。
・『峯落』
えっ……これで終わり……?せっかくのフィクションなんだから、あのジジイに制裁をくれよ!
・『追燈』
関東大震災時の、朝鮮人虐殺についての話。私は「なかった」とも「言わない」スタンスですが、「弱者利権」のやり口にも閉口しているタイプです。比較的福祉であるとか平等であるとかの「美しいこと」に価値を見出す人間だからこそ、詳しいことを調べては、「美しいこと」を利用する人々の在り方に肝を冷やすという。で、この話はかなり一方的に、センセーショナルに、「非道な行為」を強調して描いています。なぜそれが起きたのか?という部分は排除された、完全悪として。詳しく述べ始めるとキリがないので、「弱者」「少数派」は決して「イコール善」ではない、とだけ。
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