望田くんは恋をしている
」のレビュー

望田くんは恋をしている

木下けい子

どの辺がオススメかと言うと。

ネタバレ
2025年11月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 望田くんの気持ちをすごく丹念に、丁寧に描いていて、”恋ってこんな風に心の中で発酵していくんだな”という過程をしっかり見られる作品です。
「あ」とこっちが思う瞬間に、望田くんは少しずつ、少しずつ、所長のことを知って、どんどん恋に落ちてしまう。
わたしは”恋の渦に落ちる”という表現が好きなんですが、望田くんはそうではなくて、どこに底があるのかわからない、戻れるかもわからない『恋』という深い穴にどんどん落ちてしまう。その過程が愛しくもあり、切なくもある。
そして、木下先生の技で、読者の心は常にドキドキの緊張状態で、次のページはきっとこうなる、と思うとページをめくるのが怖い! お願い、ちょっと待って、となる作品てなかなかないですよねぇ。
所長は望田くんの背中をバンバン無意識に押してくるし、足立くんも「邪魔しないで!」とか言いながら、望田くんの心の中の”好き”を再確認させていくという地獄のような展開の中で⋯⋯バカ、まだ早いよぉとこっちは叫んでしまう。所長の「好きって言った方がいい。いつ死ぬかわからないから」発言許すまじ(笑)。もう、わたしはあの場面で、心がねじ切れるかと思いました。「あぁぁ⋯⋯」って。いつ死ぬかわからないかもしれないけど、もっとじわじわ望田くんのスピードでみんなやらせてやってくれよ、と思ってしまいました。
そのくせ「ほんとに目が綺麗」とかさぁ、もう勘弁してよ! 悶え死ぬ! 所長のことなんか忘れてしまえ、望田くん、と思うくらいには所長の無自覚攻めはひどい⋯⋯。いい男だけに、酷い⋯⋯。

木下けい子先生が大好きで『望田くん』、1巻は内容がスローペースだと聞いていたので、1巻がセールになるのを待っていたら、2巻の発売と重なり、2冊同時購入。結果、切なさ200パーセントに。続き、焦らさず早めにお願いします。先生も大切に描きたい作品なんだと思うんですけど、悶え死んでしまう⋯⋯。
望田くんの恋心もポイントですが、所長の憎らしい男の魅力に落ちた方も、ぜひ読んでください。ちっ、て舌打ちするくらいいい男です。が、大人ぶるのは勘弁してくれー。

大変美味しくいただきました。単話で追ってしまうかもしれない恐ろしく胸がキューっとなる作品です。
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