薔薇王の葬列
」のレビュー

薔薇王の葬列

菅野文

今更ながら、何度読んでも名作

ネタバレ
2026年1月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ いつかまとめて通しで読みたかった作品。
なかなか時間が取れず、やっとこの正月休みを費やして、本編17巻『王妃と薔薇の騎士』3巻まで計20巻を一気読み。うん、超満足。

シェークスピアの『リチャード三世』と『ヘンリー六世』をベースとした重厚なストーリーと美しい作画。
30年に渡ったイギリスの薔薇戦争で戦死したヨーク朝の最後の国王、傴僂のリチャード三世を両性具有として描いたこの作品、本当に凄いの一言に尽きる。

男でもなく、女でもない、そして男でもあり、女でもある完全な理想的存在としても神話で語られる両性具有。
その身体の特異性と出生の闇から、実母セシリーに悪魔と呼ばれ、疎んじられて育ったリチャード。

その身に背負った業として、呪いとして、己の性、そして愛を彼(彼女)が苛み、畏れるのが、見ていてとても辛く痛々しい。

敵ながら運命的に出逢い惹かれあったランカスターのヘンリー六世、共に王冠を目指して半身として愛欲を共有したバッキンガムのヘンリー、リチャードを女性と思い彼女(彼)に愛を乞うたヘンリー六世の一人息子のエドワード、リチャードに好意を寄せながら運命の悪戯に翻弄されながら伴侶となったウォリック伯の娘アン、幼い頃からリチャードに付き従い愛と忠誠を捧げ最期の時まで寄り添い続けたケイツビー。

母に愛されず、疎まれ続け、愛されることとぬくもりを求めるリチャードを愛した彼、彼女らとの愛憎劇を史実とうまく絡めながら進む物語。

物語が終盤になるほど悲劇的な様相を極めていき、追い込まれていくリチャードが穏やかに、美しくなっていくのが切なくて、終幕まで涙しながら何度も読み返した。

今更ながら、月並みな表現だけど、名作だよな。
出会えて、至福を感じた作品。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!