青野くんに触りたいから死にたい
」のレビュー

青野くんに触りたいから死にたい

椎名うみ

愛に溢れたホラーラブストーリー

ネタバレ
2026年1月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 主人公・優里ちゃんとその彼氏であり、死んで幽霊になってしまった青野くんの物語。当初から少しコミカル、でも不穏な雰囲気が立ち込めていて、藤本くんや美桜ちゃんなどの仲間と共に、黒青野くんをはじめとする様々な怪事件に立ち向かいます。呪いや儀式のロジックがしっかりしているためにホラーという超常現象に納得感が生まれ、物凄い作品だなと思います。

かなりネタバレになってしまうのですが、
読み進めるとこの作品の不穏な雰囲気の出どころが青野くんと優里ちゃんの歪な家庭環境であるということが分かっていきます。特に、青野くんの生い立ちを知ったうえで1巻から読み直すと胸がとても締め付けられます。

歪んだ家庭で育ったからこそ人の愛し方が分からなかった優里ちゃんが様々な困難に直面する中で、思い悩みながら時には間違えながらも内面的に成長していきます。青野くんを思うあまり自分をないがしろにして、むしろ青野くんを傷つけてしまうような優里ちゃんが、自分のことも大切にできるようになっていく過程がとても眩しく愛おしい。

お互いを尊重することの難しさ。人を愛することと自己犠牲は別のものだということ。自分と相手は違う存在でそれぞれ大切な存在だということ。この作品は、人生において重要で答えがない問いを我々にも投げかけているように思えます。

完璧なハッピーエンドを迎えることはないのは最初から分かりきっていましたが、最終巻、やはり胸に重くのしかかるものがありました。青野くんが幽霊になったからこそ、こんなにも2人はお互いを思いあい、愛しあうことができた。優里ちゃんが青野くんを救うことができた。このことがどうしようもなく切ないです。
青野くんは死んでしまって、それは取り返しがつかない。けれど、青野くんと優里ちゃんが死者と生者として一緒に過ごした時間や育まれた愛しさ、嬉しさは決してなかったことにはならない。優里ちゃんが青野くんのいない世界を生きるという道を選択できたのは幽霊の青野くんと過ごした思い出があったからだと思います。優里ちゃんはこれからの人生を、悲しみを抱えながらも自分の力で歩いていけるという確信を得ることができた結末でした。

最終巻を読み終えたとき、温かい涙が流れました。唯一無二の優しい物語だと思います。

椎名うみ先生、長い間連載お疲れ様でした。
いいねしたユーザ23人
レビューをシェアしよう!