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今月(4月1日~4月30日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • 雨傘で凌げないほどの恋

    ARUKU

    言葉と活字が持つ力
    2024年2月24日
    この方のような漫画を、それもBLを描いてらっしゃる作家様はこの方以外に今存在するのだろうか。存在するならどうか教えて欲しい。この文藝小説のような言葉と活字が生命の灯火を持つような、その輝きを内包するかのような作画は。近年技能が競われるような作画による躍動感、スピード感のある画を宛てられたなら返って雑音になってしまうような気さえする。
    作品舞台は現代だけれど、近現代文学の文藝小説の活字を追っているかのような内省表現と、それをより印象付けるガラス玉のような美しい登場人物の瞳は、言葉の狭間に添えられた宝石の破片のように輝く。この物語の、展開自体はそんなに度肝を抜くようなドラマではないと思うんだけど、言葉、台詞、表現方法でこんなにめろめろになって普段感想なんて滅多に書かないのに感想を投稿してしまうOTAKUを生成してしまうほど、刺さる。
  • 金の絵筆に銀のパレット

    ARUKU

    言葉のトリックが散りばめられた作品
    ネタバレ
    2022年12月29日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 侘助から始まる登場する花々の花言葉、子孫繁栄の養分として吸血する虻、破れ傘、環境によって性別が変化すると言われている蛙がとる相撲(蛙は向き合えば目が後ろになるからすれ違うことの表現かな)、結核の喀血を彷彿とさせる不如帰、からたちの花の歌詞、畑に墜落した飛行機と重ねる北原白秋の詩…
    ARUKU先生の言葉によるトリックとファンタジックな心象描写と、(個人的に大好きな)敗戦後の価値観が目まぐるしく変化する日本を舞台にした今作品。
    最高に萌えました……。
    破れ傘が出てきた時「もしかして心中物になってしまうのかな」と悲恋の結末を予想したのですが、虹尋が道端のおじい様に譲ったことで物語に変化が起こったのかな。
    人生をカンバスに例える話は数多あるけれど、金の筆のオールと、銀のパレットの月の船で描かれていく二人の旅が、生を肯定した幸せな人生をイメージさせてくれて、静かな感動がじわりと胸に拡がります。
    読み手に考えさせてくれる種を沢山散りばめてくれて、読む度に新たな発見を与えてくれるARUKU先生の作品、やっぱり大好きです……
  • 嫌い、大嫌い、愛してる。

    ARUKU

    暴力的なほどひりひり痛む愛
    ネタバレ
    2022年9月13日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 無為なページが一切ない。この一冊で見事に描ききっているこの物語は、漫画なんだけれど、どこか近現代日本文学のような、陰鬱でありながらも登場人物の内省を(くどくない微妙な加減で)描いていて、ARUKU先生の完結済作品の中でも取り分け好きです。
    『残酷って綺麗』物語ではドストエフスキーの白痴と純平の台詞が印象的でした。その後の二人も添い寝しているけれど、これが現実なのか心象風景なのか…。
    純平の独白がないところさえも読者への余白を残す作風すら心憎い演出で、夢にまで現れそうな程の強烈な余韻を残します。感動とは出会った時に言葉を失うことなのだと思い知らされる一冊でした。