毎週土曜日の朝、密かに楽しみにしている新聞の書評欄に不定期に載るコミックのコーナー。
そのコーナーに、1週間前本田先生のこの新作が載っていたのを見た瞬間、へ、もしかしてシーモアの自分の本棚読まれてる?…と思ってしまうほどドキッてしちゃっ
て、いやいや天下の朝◯新聞がそんなことするわけないじゃん、と追っかけていた推しが全国デビューしちゃうかもくらいの事態に慌ててしまったのでした…。
内容は人類の半数が気分障害といわれ、自死する人の増加に歯止めがかからない惑星。見かねた宇宙人が人類にもふもふの毛皮に包まれたペットのような特殊臨床医者体を授け、それによって精神のバランスを保とうとしている世界。そんな世界で生きている人々の生に対する思いが綴られるオムニバス形式の作品で一話ごとに登場人物が変わります。
書評を書かれたまんが編集者さまによれば、こんなにも軽くて重いマンガを読んだのは久しぶりだ、とある。はて、どういう意味なんだろう、と読み進めると、このモフモフとのやりとりの微笑ましさと裏腹に垣間見えるこの惑星に漂う、人の死が軽く扱われ、宗教上は本懐を遂げたと讃えられる中、生命の大切さを伝える言葉を大切に思う人。モフモフではなく家族の絆の大切さを実感する人々。どうやらこの惑星では少数派である人々が描かれている。もしかしたら、日常の中では表立って語りにくい生きづらさなどを正面から描こうとしているのか。と思いながら最後の2頁を見たとき、衝撃が走った。
ネタバレ、になるので何があったかは書けませんが。
しばらくの間、あの、モフモフの正体は、とか、癒やしている間、著しく言語能力を奪うこの生命体は、人間に何を与えて何を奪っているのだろうか…、と頭から離れなくなってしまった。こんな読後感は初めて。確かに軽くて重い。こういう今までになかった作品が書評欄に掲載されるのか、と初めて掲載作品に得心がいったのでした。
まだ、この作品がどこに行き着こうとしているのか分からないし、初めて本田先生の作品を読むなら他の作品の方が分かりやすいかもしれない。いつの間にか作者様のシーモア取扱分をすべて読んだ自分にとっては、作者様の新境地を見届けたいと思えた作品でした。本田先生のこれまでの作品同様、使われる言葉が印象的。真摯な作品作りの姿勢が読み手に伝わります。
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