ネタバレ・感想ありゆきしろ、ばらべに―少年傑作集―のレビュー

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繊細で緻密に描き込まれた美麗画
2023年3月15日
少年と植物と風景の描写が美しい。「ルケッタ」の花の野辺に佇む少年の絵と、「白い金平糖の島」の海に浮かぶ島、どちらも見開きで描かれていて圧巻。ストーリーはどれも、ほのかになまめかしい。装丁が贅沢で紙質も良いので価格が同じなら紙本がおすすめかな (小声)
閉じこめられたい
ネタバレ
2022年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ コンセプトBOXの作品と、描き下ろしなどからなる短編集。
表紙は若干入りづらい空気を醸し出していますが、少年傑作集という名がピッタリくる、美しさで溢れた1冊でした。

表紙の印象を良い意味で裏切ってくれた表題作『ゆきしろ、ばらべに』。
グリム童話をアレンジしたもの。
姉妹は少年に置き換えられ、鳩山先生が描くとこんなにも美しく生まれ変わるのかと驚かされました。

1話読んでは本を閉じ、日に1話ずつゆっくり読み進めました。
読み終えてなかなか現実世界に切り替えられない位酔ってしまうので、とても一気には読めませんでした。
読んでいる間は作品の延長の様な夢をよく見ていて、本当に寝起きは夢現でした。

どの作品も、その瞬間だけに宿る美しさというか。
二度と来ない瞬間を切り取った様な切なさが、美しくて。
少年という存在が、限られた時間を象徴している様で。
読み終えたら今手元にあったその世界は、時空のどこかに隠れてしまうような気になって、だから現実世界に帰りたくなくなったのかもしれません。

色々満たされてしまったというか、侵されてしまったというか。
しばらく鳩山先生の世界に籠もってしまいそうです。
メトロポリタン美術館の歌で、私も絵の中に閉じ込められたいなと思っていた気持ちを思い出しました。
「ルケッタ」が一番好き
2022年5月22日
表題作+読み切り5篇+作品年表(2012年時点)。
読み切りのうち3篇は、「限定BOX」(端正に作られた紙箱の中に、漫画冊子と共に刺繍糸などの小物が収められた、アートと本の狭間にあるような作品)として月兎社から発行されたものの漫画部分。入手困難品なので、こうして単行本かつ電子化されたのはグッジョブ。
作品年表中の単行本未収録作は、2022年現在、ほぼ単行本(未電子化((訂正))電子化されているのもアリ)に収録されたり単話電子配信されたりして読めるようになっています。
表題作は、同名グリム童話をベースにした、グリム童話そのものへのオマージュ。割とライトで著者ご本人も楽しんで描かれた雰囲気。書物への愛着も。オマージュ作品としては文句なしですが、鳩山作品として見たいのはそういうのではないため、これは星3つ。残りの短編が星5つ。色々ありがたい1冊ではあるものの、総合星4つ。
・「ニオラの黒い騎士」(13p)朝顔に、寄宿学校の遊戯的秘密を絡めて。
・「ルケッタ」(22p)修道院と伝説と、祈りに似た幻想。
・「すみれとピッケルハウベ」(20p)少年と祖父の絆、なんとも切ない。
・「白い金平糖の島」(32p)少年キュリアコを中心に結晶する夢。海の音、金平糖作りの大盥の音、甘く溶ける金平糖とアニスシード、夢とうつつの溶け合うような。
・「少年ロンド」(5p)初期作品。描かれた楽譜が美しい。
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