三味線ものと言うことで地味な物語なんだろうなと思っていましたが、びっくりする位よかったです。今までも夜光さんの小説は何冊も買っていましたが、文章がお上手だけれど再読したい本は無いなぁと言う印象でした。でもこれは違う。まず、天才と言える三味線の才能を持つ主人公のタツオは、自分ではその才能に気づかず、ただ弾きたいように三味線を弾いていると言う設定が良い。努力することもいとわず、その努力がさらに三味線弾きとしてのタツオの才能を開花させます。その音に一目惚れした攻めの浅井は、スポンサーとしてタツオの生活から気持ちまで、かゆいところに手が届く細やかさで気遣います。タツオは天才とはただ努力をひたすらする人…と捉えています。そして自分は天才じゃないけど、三味線弾きの祖父の教え通り、ただひたすら努力していきます。脆さと許し、苦しさと清廉さという相反する感性が彼の中にはあり、側にいる浅井は、あっという間に心を絡めとられていきます。なぜ浅井が性別も年の差も越えてタツオに惹かれるのかというのが、説明がなくとも手に取るようにわかるストーリー展開です。そしてベッドの中でもお互い敬語!ひー!悶えます!!読み終わったあとは、YouTubeで三味線を聴くことになること必至の小説。