自分の感じていることを真剣に言葉にする人間同士のやりとりが貫かれていて、どこを読んでいても共感できます。
ふたりが体をつなげるに至る経緯はエロが出発ではなく、まるで武術の達人同士がはじめて好敵手と戦って手の内をすべてさらけだしたかのような、言葉と信念のぶつかり合いが出発。
閨事の最中に体が溺れていながらも疑問や違和感は口に出して、互いに通じる文学の言葉で心を確かめていく様子はリアル。
露悪的でも意外に真摯な大吾、生真面目で達観しているような正祐が心の氷に気づいて変化を受容していく様、発言や行動にすべて納得できる背景が描かれています。
芯の部分で自分を理解してしまう人との出会いのかけがえのなさが愛おしくて、紙の本も購入しました。シリーズの続きも読みたいと思います。