軍鳩を擬人化した物語。
別レビューでも説明がありますが、作中の重要なアイテムである箱はジョセフ・コーネルの「無題(鳩小屋:アメリカーナ)」をモデルとし、登場人物であるマスターはコーネルの俤を借りたそうです。
この辺りの知識を入れた上で、読むことをオススメします。
it's not my pigeon.
それは私の鳩ではない。
私の知った事じゃない。
序盤でグサリと胸に刺さった言葉。
ただ一心に家へ帰るのだと飛んだ鳩たち。
純粋に、ひたむきに。
図らずも重い言葉を背負わされ、そして散っていった翼。
物語が紐解かれると同時に、
少年ダヴィーの言葉に、
彼らを思い苦しかった気持ちや祈る気持ちが
どこか遠い彼方に届くような気持ちになりました。
本作は独自の解釈であり、ジョセフ・コーネルの作品や人物の意図と異なると仰られていますが、コーネルという人物を辿っていると、鳩山先生がわざわざマスターの俤に彼を重ねた理由を見たように感じました。
作品の内容が素晴らしいのはもちろんですが、
美しい描写が画集としても成り立つレベルです。
でも、美しいだけじゃないです。
ダヴィーの感じている世界。
変わっていった彼の世界。
色々な角度から、何度も読みたくなり、
その度にやはり美しさに吸い込まれていきます。
同じくタイトルに鳩のつく『エルネストの鳩舎』も
鳩にまつわる短編がいくつか収録されています。
表題作が本当に美しいです。
本作に通ずると感じる作品が数編あるので、オススメします。