“うちのちいさな女中さん”を拝読し、長田先生の描く近代の物語にすっかり魅了され、今度はこちらも。お菓子や料理をそれぞれ1話ごとにテーマにした、大正時代が舞台の短編集です。
特別何も起こらない、何でもない日常を切り取ったお話の数々。こんな物語が私は堪らなく好きなんです。
現代よりもずっと緩やかに流れる時間や、人との密な関わり。この時代を生きたわけではないのに、なぜか郷愁さえ感じてしまう。
どこか懐かしい癒しの空間、それがこの作品にはあります。まさに“こうふく”。作りたての大福や炊きたてのご飯が食べたくなってしまいました。