陽平と稜、高校で接点のなかった二人が出会ってから、ある事故をきっかけに変化してゆく関係を描いています。生い立ちに影のある陽平に対し、華やかで活躍の場を持つ稜。妙な出会い方から急速に距離を近付ける様子がとても丁寧に描写され、時に可笑しく時に切なく目に映りました。関わり方が変わってしまう出来事の前後はとても辛くて泣けてしまいます。お互いを守ろうとする思いや大切にしたい気持ちが擦れ違う日々は、タイトルが示唆する夜明け前の薄明かりそのもの。もっと正直な言葉で伝えれば眩しくて美しい日の出が見られるのに…。そんなもどかしい思いで読んでいました。情景や心理の描き方が味わい深い作品。二人の関係の夜明けをしっかりと見届けられました。