表題作ほか1作収録。ふいに出てくる印象的な台詞が深く刺さる作家さん。ちょっとしたエピソードや描写があとからストーリーやキャラクター造形に深みを与えてくれる感じがほんとに上手。表紙のダークさにちょっと躊躇したけど、読んでよかったです。
「夜の落下」
デリ/ヘルでバイトしている大学生・氷室×上品で紳士なリーマン・九鬼。奇妙な依頼で訪れたホテルで目隠しして待っていたのは、長期インターン中の企業の上司である九鬼。女性とセッ/クスできるようにレクチャーするので、女性相手を想定したような言葉や道具が出てきます。苦手な方は要注意。SMの調教もののようで、双方の救済ストーリーなのかな。淡々と飾り気のない氷室の言葉が九鬼の心の目隠しを外していく。氷室のSの意味。道行きは困難かもしれないけど、幸せになって欲しい。
「やがて、恋になる」
遅刻ばかりの大学生・和志×小さな誤魔化しも許さない院生・津坂。明るい和志の繊細さに、生真面目な津坂の誠実さに、ちゃんと気付ける二人がいい。信号待ちしている津坂がなぜだか胸に来ました。