何気なく1巻を試し読みして、一瞬でハマり込んでそのまま全巻読破。主人公の良君の器のデカさが半端なくて、かなり酷いいじめにあったり、金の亡者みたいな大人に騙されたり利用されたり、ありとあらゆる理不尽を経験しても、悩み苦しむ一方で、その状況を俯瞰して眺める冷静さが常にある。まぁそのせいなのかはわからないけれど、平気で危険を冒したりするので、めちゃんこドキドキハラハラさせられましたが、本当に魅力的な主人公でした。
私はこの作品を読むまで、読み書き障害についての知識が無く、この障害があると社会生活を営むのにどれほどの困難があるのか全く知りませんでした。特に日本で生まれ育つと、読み書きできることが当たり前という認識で生きているので、私も知らぬ間に誰かを傷付けていたかもしれないと思い、反省しました。
いろいろ勉強になり、考えさせられることが山盛りでしたが、それ以上に心に響いたのは、良君が投げかける問いでした。どれも本質をついていて、物事の捉え方を見直さざるを得なかったです。当たり前のように思っていることって、本当にそうなの?そんなことを自分にいちいち問いかけていたら日常が回っていかないから、違和感に気付かないふりして毎日生きているけれど、時々この作品を読んで、立ち止まって改めて日常を見つめ直すようにしたいと思いました。
良君以外の登場人物たちも揃って魅力のある人ばかりで、みんな一生懸命生きているというのが伝わってきて、作者様の描写力の高さがうかがえます。私自身はマジックに興味を持ったことはないのですが、好きな人でも満足できそうなくらい専門的な話もでてきますし、私みたいな門外漢もストーリーの方でグングン引き込まれて読んでいるうちに、知らぬ間に魅力的なマジックの世界を垣間見させてもらえます。続編が出たら絶対読みます。素晴らしい物語をありがとうございました。