主に受けの吾妻視点で話は進んでいきますが、攻めの久慈視点もしっかりあり、まんべんなく感情移入していけます。2人を通して、その世界全体を描くような感じで、登場人物達はかなりの端役でもしっかり役目があって、メイン2人以外のセリフにも気付かされることが多いです。
私は2人より少し年上なのですが、30代後半くらいから気付かされる自分自身の変化というのは、自分も経てきたことなので共感できました。今まで程、肉体的にも精神的にも無理がきかなくなってきて、行動や思考をシンプルにせざるを得ない状況に追い込まれますが、そのお陰で随分生きるのが楽になったように思います。吾妻と久慈もそうですが、寂しさや虚しさや悲しみなど、漠然とした不安や不満に至るまで、どうにかしようと解決を急がずに、存分に感じて味わった後は、それらを抱えたままの自分で今日を生きていく感じ。
仕事とプライベート、衣食住と性生活、その中に浮かんでは消える様々な感情、そういうのが時間と共に流れていく感じで淡々と描かれていくのは読んでいて心地良いです。その流れるような変化を楽しみ身を委ねていると、齢をとるのも悪くないなと思えてきます。