大学寮でルームメイトになったゲイの男とぼっちの男。それぞれ根深いトラウマを持つ二人の卒業するまでの一年間の交流を描いたお話。
これは、男子大学生が同居人となりただ普通にBLする、そんな単純なお話ではありません。このあらすじを一見しただけでは分からない奥深い心理描写や根深い問題が内包された素晴らしい作品です。BLで、読み放題で、こんな作品に出会えるとは思わなかったので、本当に嬉しい誤算です。
ゲイであるがゆえ他人にとても気を遣って生きている仙道と、過去のトラウマのせいで誰とも仲良くならずに一人で生きる響。そんな傷ついた二人が同居することで、互いの些細な優しさに癒されていく様子が、じっくりじっくりと描かれています。その過程はグラデーションを描くように少しずつ濃くなり、交わっていく。この先、二人がどうやって幸せになっていくのかが本当に楽しみです。
そして、合冊版3巻では、クソタカナシこと高梨先輩が登場。どんなクソ男かと思っていたら、予想を突き抜ける程クレバーで情に厚く、しっかりとした大人でビックリしました。やり方は強引だしハチャメチャだけど、彼も響を心配して助けようとしてくれた一人であったことに間違いはありません。また、彼の大学に通う意義などの話はとても全うで、まさに「こうあるべき」という大学の本質を説いているようにすら感じました。ただ何となくやり過ごすのではなく、きちんと意味を持って、目的を持って過ごそうとしていた彼が得たものの大きさを感じずにはいられなかったです。
人との出会いが財産となる。そんな交流を丁寧に丁寧に描いているこの作品が、今では何よりも待ち遠しいお気に入りです。
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