タイトルと絵の線の細さから、「創作BLとしてsnsで単話で出ていたものを繋げた」的な、そんな軽い読み心地の単行本だと思っていました。設定もケモ耳で可愛らしいですし、登場人物の性格の対比も分かりやすいですし…。でも、良い意味で本当に期待を裏切られる作品でした。同じ理由なのに逆の行動に出てしまう、そういう根本的な差が正反対の性格を良く綺麗に表しているなと思いますし、2人が知り合い互いに惹かれていく理由の説得力にもなっていてすごく良いと思いました。また、こういう「お互いの性格に惹かれ影響されていく」タイプの作品は大好物なのですが、「いやいや元の性格があれならそうはならんやろ、今までの人生なんやったん」とかよく思ってしまう人間から見ても、「あの性格があの人に影響されたらこういう風に変化していき、そこから言動もこんな風に変わっていくんやろな」がめっちゃくちゃ忠実で、作者さんが登場人物をキャラクターではなく1人の人間として理解しているんだな、というような心地良さを感じました。また、セリフの使い方も本当に好みで、奥は特に「人と自分は違う」と感じている心情がセリフの節々に出ていてリアルですし、保科は脳から口直結型だったのが「言いたい」より「伝えたい」に重きを置くようになったのがぐんぐん伝わってきて…。正直、「面白い」と言うよりは「腑に落ちない部分がひとつも無く、全ての表現が綺麗な上に納得出来る気持ちいい作品」という感じで、読み終わったあと「シェフを読んでくれ!!」の気持ちに本当になりました。こういう作品に出会えるから私はBLを見境なく読み漁ってきたんだ…と改めて思える作品でした。最高です。