作者の逝去により未完となっていた作品ですが、その後、川崎芽衣先生と編集部の尽力によって最終巻が刊行されました。長く多くの読者に支持されてきた本作が、ひとつの区切りを迎えた事には大きな意味があると思います。
自閉症の子供と家族の歩みを描きながら、現実の困難さだけでなく、人との関わりの中にある救いや支えを丁寧に描いています。不快なキャラクターも勿論登場します。ですが誰かを一方的に断罪する形では描かれず、たとえ問題を抱えた人物であっても変化や理解の余地が示されています。
主人公の母親は良い環境、良い先生に恵まれ、家や子供を顧みなかった父親も誠心誠意向き合うようになります。こうした展開には現実との距離を感じる方もいらっしゃるかもしれません。それでもこの作品が多くの人に受け入れられたのは、こうあって欲しいという希望を丁寧に掬い上げているからではないでしょうか。実際にこの作品に励まされたという声は多く、医療や支援の現場に置かれている例もあります。ドラマ化もされて、作品の持つメッセージは広く共有されてきました。
本作に影響を受けた読者によるスピンオフ的な作品も存在します。直接的にキャラクターが重なることはなくとも、その思想が広がっている点も興味深いです。読み物としてだけではなく、人を理解する為の一冊として、長く受け継がれる価値のある作品だと思います。