持って生まれた外見はそう簡単に思い通りにできないし、実際外見だけで相手の価値を見くびって侮辱する人間もたくさんいます。『人間は中身!』と言えるほど世の中綺麗じゃないのは確か。でもこの作品を読んで『どんな外見でも、心は必ず外ににじみ出る』ということを改めて思い知らされました。然子と入れ替わったあゆみは、見た目は容姿にコンプレックスを持っていた然子だけれど、火賀や友達のことを心配している顔・信頼して笑ってる顔・自分を奮い立たせて前を向く姿、すべてが表情豊かでとても可愛い。一方、外見はあゆみになっても妬み・逆恨みにとらわれたままの然子は、顔はあゆみなのにしばしば表情にホラー入っちゃう。そうやってにじみ出る心の内側が、外見の一部になっていくのだなあ、と。ストーリーはどんどん先が読みたくなる面白さでしたが、最後の大詰めのやりとりがややありきたりで緻密さに欠け(特に母とのくだりとか、なんかいきなりだなって感じで…)そこが残念。それを思うと本当は★4~4.5くらいですが、たった3巻分の出費でそれをはるかに超える密度の濃い時間をもらったので、感謝を込めて★5で。