嫌い、大嫌い、愛してる。
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嫌い、大嫌い、愛してる。

ARUKU

ヒリヒリするような痛さと切なさ

ネタバレ
2020年10月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 昭和50年代の日本海側の寒々しい地方都市が舞台です。ドエスな攻めが幸薄で無垢な受けを、ドクズなやり方で手に入れようとするところから始まります。脅迫的なやり方で身体を重ねるうちに、二人の気持ちが徐々に変わってゆきます。お互いに、それぞれ相手への、攻めには愛が、受けには怒りと反抗心が、徐々に大きくなってゆきます。その中で人生において苦しいことばかりが続き、それでも一生懸命、健気に生きてきた受けの清廉な心のあり方が、ドクズにならざるを得なかった歪な環境にあった攻めの心を変えてゆきます。特に第5章と最終章の間の断章『白い冥路のライオン』は、行きずりの第三者の視点から描かれた二人の姿が、その美しさと切なさでヒリヒリと心に染み入ります。そこからのラストは必見です。
重い作品ですが、私は大好きです。決して忘れることのできない作品として、大切に読み返します。
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