is in you
」のレビュー

is in you

一穂ミチ/青石ももこ

作中2010年頃の自由な香港はもうないのかも

2021年7月12日
一般小説で直木賞ノミネートされている作者さん。いまノミネート記念キャンペーンセール中です。こんなに売れっ子なのに普段はお勤めされているので顔出しインタビューはなく、ノミネートされるまで親にも副業小説家だと内緒だったとか(驚き!)。もし直木賞受賞されたら、ついに顔出しされるのか心待ちにしています。
この作品は新聞社シリーズの1作目、香港からの帰国子女の一束と高校の2歳年上の先輩圭輔の物語。1997年香港返還の年にふたりが出会った日本の高校と、年月過ぎて再会した2010年頃の香港にある日本の新聞社支局が舞台です。
番外編が「long hello 〜」と「ペーパー・バック」の1、2巻に掲載されてるので、この作品読んでからすぐ読むとよいですよ。一穂先生の作品って、番外編多いけどこうやって纏めて単行本にしてくださってるので、書かれているエピソードなら全部読みたい私にはありがたいです。
元々リアルで香港出身の友達が多く、色々話を聞くこともあり、今住んでいる国の近所のコミュニティには数千人単位で香港からの移住者が増えているいま、作品中でも書かれていた自由主義を標榜していたアップルデイリーは現在は廃刊、一国二制度の50年間特別措置は有名無実化され、作品で描写されていた自由な香港の雰囲気はどうなってるのだろう、このふたりはどうなっただろうとかなり複雑な思いで読んでしまいました。香港人はフットワーク軽いので、作中人物の美蘭なら親のためにもどこかへ移住してるかもしれませんね。両親がテレビ局の重鎮と行政府の高官だったら、うまくいけばいちおう体制側ですが、万一何かあったときに海外へ逃げやすくなりますから。
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