ステノグラフィカ
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ステノグラフィカ

一穂ミチ/青石ももこ

衆議院議会速記者の世界

ネタバレ
2021年7月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 小説って自分の知らない世界に連れて行ってくれて他人の人生を生きられるから楽しいし読むのを止められないんですが、この作品はほんとーに面白かった!新聞社シリーズ3作目、お仕事BLの中でも特に全く知らなかった衆議院議会の速記者と政治部記者、前作でチラチラ登場していた西口さんのお話です。速記者の碧のキャラが良すぎて辛い。。番茶の出がらしで掃き掃除をするような男の子です。読み終わったらぜひペーパーバック2巻収録のアナザグラフィカを読んでください。作中気になっていたあの人たちがメインの短編です。彼らの結末はもう知っているので切ないですが。。
一穂先生の取材能力には感服します。シリーズ1作目舞台の香港の描写も住んでたんですか?って聞きたいくらいでしたし。政治記者の生態や国会内の醜聞のあれこれも軽くBLの枠を飛び越えてました。
もし直木賞受賞されたら、BLの波止場から一般小説のメジャーな大海へ漕ぎ出す先生を笑顔と涙で手を振って見送ろうと決心していましたので、受賞ならずで先生の尊顔を拝せなかったのは残念でもありホッとしたようでもあり。ノミネート一作目の受賞はなかなか難しいですよね。前評判は高かったようですが、BL界では売れっ子巨匠でも一般小説はきっと新人扱いで次作の様子をみてみましょう的な講評だったのでは。でもこれから一般小説の執筆依頼が更に増えるでしょうから、お勤めとの両立をどうされるのかなとかBL枠って枷がとても多いので、長く書いていらっしゃると枠を超えたものを書きたいと思ってしまうのかな、とか愛読者としていろいろ考えてしまいます。そして一般小説を書き続けられるなら、また直木賞候補にも上がってくるでしょう、間違いなく。BL好きとして、先生の緻密な構成力と魅力的なキャラと文章に魅せられた読者として、ずっと応援してます。
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