明治従属タングステン
」のレビュー

明治従属タングステン

たつもとみお

2人の未来を燈し続ける美しい光

ネタバレ
2021年7月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初めての作家さん。新刊予定で見かけて読むのを楽しみにしていました!
色香漂う美しい表紙絵そのままに、主従関係から形を変えていく深い想いの変遷が綴られるラブロマンスで、とても好きなお話でした。

明治末期。言葉も話せずただ生きていただけの世界から救いあげてくれた主人である亮二に対し、絶対的にな忠義と敬愛を持ち尽くすエド。
地方の発電所計画に計画技師として招かれた亮二は過去に深く関わった人物、中原と相対し、亮二の中に中原の存在がある事を知ったエドはただの主従の関係性に変化を持ち込みます。

明治末期の重厚なイメージよりも文明開化の色が出され、2人の生きた辛い過去も作中そこまでの重さは引っ張らず、発電事業に隠された思惑の行方と成し遂げるまでの道程の面白さ、合わせて亮二に触れ昂っていくエドの想いや、エドに少しづつ惹かれ存在の大きさを感じる亮二の正直な気持ちの変化が駆け引きなく描かれ進行していくので、とても読みやすい印象でした。中原と亮二の関係は、彼がいたからこそ、という事が当然あるのだけど、その他に明かされた事実は赦されぬ事で悪行は回り回ってやはり自分に返ってくるもの。

何をするのも全てが愛する亮二中心なエド。出来る男が亮二にだけ見せるワンコみたいな従順な健気さや、亮二を必ず守り助ける頼もしすぎる風格を纏った姿、そのどちらも堪らなく好きでした。 亮二が地下のエドを待つ間に見せた、切ないくらいに愛しさが零れる表情からも、彼の中でのエドの存在の大きさと想いの強さがヒシヒシと伝わってきてとても良かったです。

身体を重ねる二人がまた色っぽくて。美しい絡みがとても素敵だしトロンとした亮二が可愛い。エドたまらないだろうな~
そして描き下ろしマンガの可愛いさは、本当に何回も読んでしまいました笑
フォローしてる方々も高評価で改めて素敵な作品だなと思います。

あの日、放っておけず手を差し伸べた事がきっかけで主従関係が始まり、肩を並べて事業を見据える力のある右腕へと成長を遂げ、共に生きたいと乞い願うほどに愛し、愛される関係へと姿を変える。こんな幸せな事ってないなと思います。
孤独に震えたことのある2人だからこその幸せに満ちた恋の物語、とても良い読後感で満足でした。
いいねしたユーザ21人
レビューをシェアしよう!