雪人 YUKITO
」のレビュー

雪人 YUKITO

大沢在昌/もんでんあきこ

悪とは何か?一気読み完徹!!

2021年7月29日
もんでんあきこ先生の画力がなければ、ここまで惹きこまれなかっただろう。もんでん先生の描く雪人は、主人公の魅力を十二分に画に起こしたものだ。女性読者の中には雪人にときめいてしまう方もいるだろう。
大沢在昌先生の「狩人五部作」の中からこの作品を選び、何より登場人物の設定を大胆に変えて、よりドラマチックに仕上げたセンス。原作を知ってはいたが読み進めながら何度も、これは面白いと唸らされた。「設定がありえない」と内容を否定してしまう前に、まず読んでいただきたい。
主要人物が其々の信念の下、時に悪が必要悪に変わり、私はそれを真っ向から否定できなかった。点が、人の繋がりを経て線となり、大きなうねりとなる様は5巻一気読み必至だ。何度も読み返しながらではあったが、読み終えた時外は夜が明けていて、久しぶりの完徹を経験した。
登場人物ひとりひとりに、こういう生き方しか出来なかったのかと苦い思いが湧いてくるが、静かな余韻を残すラストに納得し、深い溜息が出た。
阿仁のマタギの山の緑や沢のせせらぎを思い浮かべながら、夏に読む作品としてもお薦めしたい。
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