影の国から
」のレビュー

影の国から

高岡あまね

斬新な設定で心に残る物語。良ければ是非

ネタバレ
2021年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み放題から。最初に読んだときは斬新な設定が印象的で、涙が止まらず、感想もまとまらず、でも心に引っかかる不思議な作品..でした。再読して改めて深い作品だな...て思いました。
*以下、内容に触れます。気にする方は本編を読んでから戻ってきてください*
最初に読んだときは、影の国ではあんなに純粋に愛し合っていた当真と和樹が、現実世界では当真を好きなのに世間の常識やクラスメイトの影響を受けた和樹が真逆の対応をしてしまい、当真は死ぬのを免れたものの、和樹が絶望して死ぬ姿が辛すぎて...。「流されるな、自我を持て」と言われているような...
再読すると、影の国で2人が知り合ったのは中1、現実世界で和樹が当真を意識したのは中3。夢で見た2人の姿に自分の内心を突きつけられる和樹ですが、実は影の国の和樹の影響を受けての目覚めだったのでは?と思うと、パラレルワールドでのもう1人の自分に現実世界の人間が影響を受け、最後は影の国の人間が消滅してしまうという、自然の摂理に反した者への報いと悲劇のようにも思えます。しかし、トウマを突然自死で失うより、カズキは愛するトウマが生き長らえたので、影の国のカズキにとっては良かったのでしょう。このとき、現実世界の当真は、自死のきっかけを与えたクラスメイトが何があったかは伝えず、和樹の想い知らないままだったのでは...。当真は、その後良い人生を過ごしたと思うけれど、和樹が可哀想...。蓋をしていた良心に目覚めた和樹には、もう自分自身を罰することでしか当真にしてあげられることがないような気持ちだったのかなと。他方、影の国のトウマが終生カズキを変わることなく愛している描写が美しく幸せを感じました。
オサムさんの話は、自分だったら、どうするか考えさせられた。自分ひとりだけ違う感覚を持っていることに強い孤独を感じるだろう。トワさんが自分が何者なのか教え、存在を肯定してくれたから生きられたのでは。オサムさん達はどうして自分達が存在するのか、異端な存在ゆえ悩みは深いですが、 大半が現実世界をトレースしてる影の国こそどうして存在するのか?我々現実世界の人間の愚かさを映す鏡の世界なの?確かに星新一のショートショートのような、非日常の世界から、現実世界での出来事を客観視させる強烈な印象を与える作品です。最初レビューするとき星いくつにするか悩んだのですが、☆5の方が多くて、嬉しい!
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