無力な人々
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無力な人々

西田東

無力な人々の、結末のその先にあるもの

2021年8月22日
こちらを見つめる表紙のシブいイケオジと視線を交差させ、ドキドキとおもむろに開いた1ページ目、この無音の3コマの部屋の様子や物の位置、表情だけで彼がどんな人であるか3割がた説明しきる先生の描写力。まただ。1コマの持つ意味とパワーでまた否応なく足止めされ隅々まで目を凝らしてしまう。
BLではなく青年マンガ枠の46ページの短編。
役員登用を蹴り閑職に追いやられたアラフィフの尾崎部長とその息子の修一、異動してきた女性部下の沖本の3人が織りなす想定外のストーリー。
そもそも“無力”って何のことだろう?確かに登場人物のうち2人には“力”がある、なのに“無力”とは…。不要で無意味な力?客観的なそれというよりは主観的な無力(感)に近いのかな。自分が夢も希望もなく人生を精力的に生きていけないという以上に、自分にとって意味ある存在が力強く生きていく力になってあげられない、それが彼の感じる “無力”の正体なのでしょうか。
切実なまでの親の心に胸を衝かれる。憤りや苛立ち、申し訳なさや哀しみ、気がかりに憂い、身を捨ててでも救いたいかけがえのなさ。それらを皆ひっくるめて愛しさと呼ぶのだろうか。
はたして何人が無力な“人々”だったのでしょう?2人?3人? あるいは…?
珍妙な紹介文は事前に読まない方が無難です
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