心中するまで、待っててね。
」のレビュー

心中するまで、待っててね。

市梨きみ

思い切り落とされるけど物語としては絶妙!

ネタバレ
2021年8月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 想像していた以上に読了後気分が下がってしまったんですが……心は全く晴れやかではないですが、色んなメッセージが詰まった素晴らしい作品でした。とても好きです。
読む側としては、福太と葵兄ちゃんを再開させた時点で、そのまま誘拐犯逮捕して、はい、2人の本当の幸せはこれから〜…みたいな感じの結末をどうしても期待してしまうんですが…。きみ先生としては、葵兄ちゃんが殺されて、真実を知った福太が彼のあとを追う、という2人の末路を描きたかったんだろうなあ。
でも確かに、福太の視点で考えてみても、福太のあの精神状態で、最早葵兄ちゃんを愛する事だけが生きる糧になっていたんだとしたら、"心中"しに行く真意も理解できるなあ。2人が一緒に幸せになれるなら、それが一番です。彼等にとってのハッピーエンド。(いやそれでも!こちらとしては、葵兄ちゃんが死ぬ事前提で2人のこの先を想像してないですけどね?!もし死んでいなかったらとか、あの缶箱に入る結果になっていなければ…とかってどうしても考えますよね…心の声です、はあ…。)
物語の内容はドス黒いですが、福太と葵兄ちゃんの心的トラウマや他の暗い部分に焦点を置くというよりも、敢えて2人の幸せそうな日々やお互い愛し合っているという気持ちにフォーカスして、作品全体の雰囲気をある意味ふんわり温かく見せているところも好きです。まさしく、ハートフルに不穏。勿論、幼少期時のトラウマや、拉致・誘拐、性的暴行などの惨さもしっかり描写されているので、そういった問題に関する問題提起やメッセージ性もスルーせず同時に含まれていて良かったです。
率直な感想としては胸糞わりーという感情が先走って出てきてしまいますが、ストーリーとしてはインパクトがあってドラマチックで凄く面白かったです。実写映画化しても面白そう。
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