このレビューはネタバレを含みます▼
読み放題。マチ子先生、戦争三部作の2作目。
「アンネの日記」から着想を得たフィクション。
一読では拾いきれず、あとがきを踏まえ何度も読みました。
今まで戦争というと、現実に起きた悲惨さ残忍さからその重みを知らされる事が多かったと思います。しかし本作を通して、初めて感性という面から戦争を感じ、今までにない涙を流しました。
史実を辿る一方で、現れる箱の世界。
時空も何もかもから切り離された空間に居る太郎と花子。
花子がいつまでも握りしめていた1つの飴玉。
飴玉を口に含んだ甘さを知っているから、
きっと花子が幸せのままで居られるのではないかと、
夢のように希望さえ抱いてしまう。
物語の主人公で居られなくなった世界を、
花子と同時に突きつけられる。
現実世界に引き戻され味わう絶望。
飴玉は、宝石から永遠を引いたもの。
消えてしまうもの。
それが夢であると誰もが分かっている。
けれど花子が太郎に差し出した飴玉が
彼の心を溶かしてほしいと願ってしまう。
太郎と花子の恋がこの世のどこにも存在し得ないと分かっていても、それが現実であって欲しかったと願い涙する。
何も説明的でない。
寧ろ説明は一切なく、読者の想像に委ねられるストーリー。
だからこそ心を強く揺さぶる。
このような表現で戦争を表した先生に、何と言葉を返せば良いかすら分かりません。
何度も読むべき、読まれるべき作品です。