薫りの継承
」のレビュー

薫りの継承

中村明日美子

血と狂気と愛

ネタバレ
2021年10月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 登場人物の体の線はみな魅惑の曲線で、それを眺めるだけでも溜め息が出そうになる。しかもこの物語は、細部まで美しい画面の中で展開される、狂わしいまでの抗えない愛がテーマ。耽美的要素満載なのだけど、それだけじゃなくて最後には切なさが押し寄せてくる。ほんとすごい、、、
天才・中村明日美子が描くんだからいいに決まってるでしょ、と思わずに素直な気持ちで読みたい。そうすると、読後には描く技巧だけでなく、人間を描くことへの真摯な姿勢にも感動を覚えるはず。
二人が性行為に及ぶようになる前も後も、兄さんはずっと竹蔵のことを受け入れまい、としてきた。交わる際には目を覆うことでその相手がだれなのかを隠す必要があった。
竹蔵は兄さんのことしか見つめていないにもかかわらず。
目を隠す、香りに惑わされる、、現実を見ない・受け入れないなら続けられたことも、現実を突きつけられた瞬間、それは破滅の道を突き進むことに変わる。
兄さんにとって竹蔵の愛を受け入れること、そして自分の竹蔵への愛を認めることの代償は死。結果的に、死がこれ以上ないほどの愛の証明、ラブレターになってしまうなんてね、、、(涙)
切なさと人間のままならなさに感じ入った上・下巻でした。
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