薔薇王の葬列
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薔薇王の葬列

菅野文

菅野文版シェイクスピア悲劇の傑作

2022年1月9日
本誌で最終回を迎えアニメ放映も始まる記念に。シェイクスピア史劇をベースにしているとはいえ、そこは菅野文先生、リチャードは醜怪で陰気な背むし男ではなく、両性具有の美形。王位簒奪者の悪役ではなく苦悩しながら、成り行きで王位につくところは、森川久美先生の短編「天の戴冠」(名作)を彷彿とさせます。話の進行は史実というか、ほぼシェイクスピアの「ヘンリー6世」と「リチャード3世」に沿ってすすみますが、そこは創作の自由で、ヘンリー6世とリチャードの悲恋というとんでも設定や、ヘンリーの息子やバッキンガム公、従者がリチャードガチ恋勢と、主人公が、もてもてです。ちなみにヘンリーとの絡みはBL風、バッキンガムや、ケイツビーとばベルばら状態が堪能できます(一途なイケメン従者X男装の麗人)。また、ヘンリーの妻マーガレット王妃や、リチャードの妻になるアン、魔女のジェインと女性陣が強いのもいい。名前被り問題が乗り越えられれば(ヘンリー、エドワード、リチャードが複数出てくる)楽しめること間違いなし。リチャード3世は英米ではアンチ・ヒーロー勢に人気が高く、日本のまんが・アニメファンによる海外のファンダムでも、本作は話題にのぼることがあるので、アニメ化をきっかけに海外でも「乙男」くらい盛り上がってほしいと思います。
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