午前2時まで君のもの
」のレビュー

午前2時まで君のもの

奥田枠

どうか、どうかみんな幸せでありますように

ネタバレ
2022年1月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 雑誌で一部見かけた時から気になっていましたが、これほど胸がざわつくとは予想もせず、読んで良かったと思います。泣けてしまいました。自分でも驚くほど、最後はポロポロ涙が溢れて止まりませんでした。ミチの苦しみ。恭一の切なさ。灯の哀しみ。
正直なところ、色々意見が分かれるだろうと思いながら読んでました。実際、シビアに見る自分がいたのですが、まさか泣けるなんてと思うほど、終盤には感情移入していました。
事故による後遺症から来る記憶のリセット。題材としてはとても興味深いものでしたが、色々とそうなる気持ちはわからないでもないとか、その選択した思いもわかるけど…という『けど』が引っ掛かかってなかなか共感しづらい面がありました。
21歳のまま時が止まって、新しい記憶が積み重ね出来ない日々がどれほど不安で辛い事でしょう。過去を失くし明日への不安があるなかで、大事な事さえ忘れてしまう現実を知る事が辛いとメモを止めてしまう気持ちもわかるけど、でも自分がどう考え、どう行動したのかわからないまま今日を迎える事の方が怖いと思うのです。自分の行動に責任を持てない事の方がもっと怖い気がします。
未来への希望に賭けて灯と結婚したミチですが、恭一への気持ちを完全に忘れているならともかく、気持ちがあるままの結婚は破綻が目に見えていたはずなのではないかと思います。灯も記憶に障害のあるミチとの結婚に覚悟はしていたものの、拒まれたり不貞される事は気持ちを踏みにじられてる思いです。灯なりの日々の努力があったと思うので、彼女には幸せになって欲しいと心から願います。
あらゆる数々の行動や気持ちが繋がって、自分がしてきた事があまりにも未熟だったミチにとっては辛い事。大きな後悔が押し寄せて来るなかで、全部受け止めて、自分を見つめ直したミチが哀しくて、辛くて胸が痛みます。
お父さんがミチにかけた言葉がとても胸に響き、涙しかありませんでした。ミチの苦しみを知る父もまた辛い。今日を忘れても、家族が覚えていてくれる。今日の愛を忘れても、恭一が覚えていてくれる。明日も、またその次も、そのまた次も、恭一が側に寄り添って覚えていてくれる。毎日、毎日、二人で恋をしよう。毎日、新鮮な気持ちで恋をしよう。きっと二人で迎える明日は素敵だから…
午前2時を過ぎても二人でいられる幸せが嬉しいですね。
ミチも恭一も灯も、どうか幸せでありますように…
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