ルックバック
」のレビュー

ルックバック

藤本タツキ

最初から最後までずっと胸が締め付けられる

2022年1月31日
素晴らしい、という言葉では言い表せない、凄みを感じる作品でした。どんだけの熱量があればこれだけの作品を生み出せるんだろう。漫画の底力を思い知った。羨望、見栄と尊敬、剥き出しの好意や勇気、こうした繊細な感情が、圧倒的に少ない台詞と、圧倒的な画力+演出でありありと心に響いてくる前半。二人の関係変化に緊張しつつ、同時に作者の才能に衝撃を受けながら読んだので、二重に胸が締め付けられっぱなしだった。中盤から後半にかけては、更に思いもよらない展開で、物語だけではなく作者の現実世界への祈りや想いが溢れ出ているような気がした。その人間味深いところも、私にはぐっときた。無限に書き込まれているような緻密かつダイナミックな背景だけでも星5にしたいくらいだけれど、それは魅力の一部に過ぎない。背景+人物の表情、動き、コマ割、全てトータルで魅せる力が凄い。どんなベタなプロットでもこの作者さんが書くのなら、どんな風に描くか見てみたくなる。とはいえ、先生の他の作品は、ベタどころか突き抜けてる、グロいファンタジーなどもありますが。そちらの才能も凄いですが、直球で読みきりのこの作品、漫画の中でも特に演出方法に興味がある方、絵で語る作品が好きな多くの方にお勧めしたい。
いいねしたユーザ16人
レビューをシェアしよう!