このよのはじまりこのよのおわり
」のレビュー

このよのはじまりこのよのおわり

たうみまゆ

短編だからこそ強く生きてくる作者様の味

ネタバレ
2022年2月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 江戸、明治、大正、昭和と、その時代時代に生きた男男恋物語の短編集です。
いずれも粋なセリフ廻しと、その時代に即した言葉がカッコ良いです。。。

○表題作2篇と巻末の「おまえ百まで」女形と手習いの先生との幼馴染みCPのお話。最高な男前受けがここに居ます!
○「硝子哀歌」忍れど色に出りけり…なお話。脇キャスの粋な計らいが良いのです。
○「いずみの如く、」短いながらも「欲」がテーマの鮮やかなお話。この先生の描く脇の女性は本当に魅力的です。
○「カラスの名前」一番好きなお話です。3人の、節度や常識や思いやりの、その奥の根っこの強い思いが垣間見えて泣いてしまいました。
○「カムバック・スイート・ホーム」東京タワーが建築途中の、まだ東京の空が広かった最後の時代。ノスタルジックでありながら前向きな空気の中で、主人公の言う「好きな男に好きになってもらうにはどうしたらいいのかな」という、BL永遠のテーマに、腐沼の原点に還らせてもらいました。
○「龍の引越」江戸の華である火事を消す、花形職業の火消しの、そのまた花形の纏持ちしかもノンケが、陰間茶屋で念者を買わざるをえないという設定だけで滾ります。タイトル!上手い!
。。。。。

どのお話も作品自体に変な駆け引きが無く、自然に言葉と絵を紡いだ結果の感動、という趣がありました。これは作者様の素晴らしい持ち味で、短編だからこそ生きた美点だと思います。
また、BLでここまで女性を絡ませてしかもカッコ良いと思わせる作風も貴重だと思います。。。

エロは少なめでした。
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