ころす人たち
」のレビュー

ころす人たち

西田東

友達想いの優しい男の子の短い物語

2022年2月26日
表紙をめくると、内表紙の兵士と背中から抱きつく子どもは笑っているのに、そこに添えられた言葉にギクリとします。
「そこに絆があったとしても、僕はあなたを………。」
こんなに残酷なことがあるだろうか、と思います。
フォローしている方のレビューで知り、この本を読んだのはちょうど1年くらい前。気持ちが動揺しすぎて、レビューを書けなかったのだと思います。

今日もいつも通りに目覚めて、いつも通りに仕事へ行き、帰りに晩ご飯の材料と歯ブラシを買い、お風呂に入ってご飯を食べました。そして、本を読んでいつも通りに寝る予定です。
突然、この「日常」を壊され、「心」を傷つけられ、「命」を奪われる人たちがいます。人の「日常」を破壊し、「心」を蹂躙し、「ころす」人たちがいます。
連日のニュースを、いつか読んだ本の世界のように感じてしまう自分に、「これは現実だ」と言い聞かせています。
西田先生が描いたこの世界は、誰かの身に起こった、あるいは、これから起こることなのではないかと思います。あまりにも過酷で辛くて悲しい現実。
各国のトップが話し合っても、すぐには止められない攻撃。「戦争」や「侵略」は起こさないことが最重要だと改めて思います。自分は無力だと容易に思いますが、「反戦」の気持ちを心に根付かせておきたいと思わせてくれる本の一つが、「ころす人たち」です。不条理な攻撃を見聞するたびに読み返すこの本は、心を掻き立てる大切にしたい本です。
自分が幸せであることに罪悪感を抱く…そんなのは本当はおかしなことだと思います。自分の幸せを、誰かの幸せを、当たり前に感じられる世界であるように、どこに生まれても、どこで暮らしても、子どもたちが健やかに成長できるように、私も考え、想いを巡らせたいと思います。
広く読まれて欲しい作品です。
西田先生、ありがとうございます。
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