Season
」のレビュー

Season

麻生ミツ晃

さすがの一言

ネタバレ
2022年6月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 麻生先生の作品がヨミホで楽しめるとは至極のひととき。

先生の作品は重厚で儚くて苦しくなりますね。
本作品も時代背景もありますが世知辛い人生に翻弄され泥水をかぶり這い上がって生きてきた松岡と、松岡のたった一つの透き通った光、人間であると思わせてくれる東のお話。

松岡の半生、仕事を想像すると東がどれだけ支えになりよすがになったのかと胸がざわつきます。残酷で容赦のない世界に身を置くことを選んだ自分は日陰者だけれども東の面影を傍らに感じていたいと行動する松岡が苦しい。

反して、東のどこまでも育ちの良い素直で曇りのない心と生き方。歪みがないわけではなく、歪みや凹みまでしなやかに寛容に松岡を求め癒してゆきます。

四季と絡めて物語は進んでゆきます。
四季のそれぞれの場面が情緒的に美しく艶やかに描かれているのも素晴らしく心に残ります。

純文学を読んだ時のような読後感。
出会えてうれしい作品でした。
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