はきだめに恋
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はきだめに恋

はなぶさ数字

良い意味ではじめの印象を裏切る救済物語

ネタバレ
2022年10月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最初、試し読みで、ゴミ捨て場に倒れている謎の男と人の良さげな男の子…BLでよくある始まりだけど、ヒゲのおじさんか〜と刺さらず、スルーしたんです。でも、なんかひろくんがいい子過ぎて危なかっかしい。あの死んだ目をした男(山鹿)に、内臓売られたり、下手したらAV出演させられやしまいか?と心配になってきて、いっちょ親目線で見守ったるか…という気持ちになって購入。
読み始めると、ひろくん、キョドリ方が半端なくて笑いを誘うと共に庇護欲を掻き立てるわ、この子〜!と見守っているうちに、クローズドゲイであること、何者にもなれていないことについての不安と罪悪感に押し潰されそうな姿に、似た経験したことあるよ、お母ちゃんも…と感情移入した瞬間の山鹿のとった行動とセリフが、大人の包容力を体現化してて。「はっ、けんちゃん…好きー!」とお母ちゃん設定どこいった状態に(タハッ!)☆
途中挟まれる山鹿目線のシーンで、ひろくんとまったく違う光景を見てきた人生を歩んできたのだけど、他人を助けるための夢を持っていたという、実はひろくんと似たところがある山鹿。それが分かるにつれ、今度は大人だけど挫折し傷付いた山鹿に感情移入の対象が移り、打たれ弱そうなのに必死に夢を実現しようとするひろの姿に山鹿が救済される展開に、読んでるこちらも救われた気持ちになりました…。

うーん、出だしのいかにもBLファンタジー的な雰囲気から、途中味わう感情や着地点は現実的。まったく相容れないように見えた2人なのに人の役に立ちたいが為の夢があることが接点となり、大人の山鹿が若者を救ったかと思うと、意図せずひろが大人の山鹿を救済するという、始まりと読後の印象のギャップが新鮮な相互救済物語、ですね。

ひろくんの料理のときの変貌ぶりや、ひろくんアザラシバージョン展開など、ちょいちょい笑いも挟まれ、作者様のサービス精神が作品としての満足度を高めてくれます。
親目線で読み始めたのに、1冊の中でひろくんが成長し、途中、山鹿に息子を嫁がせる親の気持ちを味わいました( ; _ ; )/~~~幸せな着地点を見つけた2人の姿に合掌ですっ!!

波瀾万丈というより、2人が歩み寄っていく姿をじっくり描いている作品。挫折した山鹿が救済され希望を取り戻す展開が、2人を見守ってきた身には尊かった(泣)。エチはラストに。体格差がいい塩梅ですよ(喜)。
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